歯を失う原因は、様々。
日本人の歯の喪失原因の第1位は、歯周病(約4割)。第2位は、むし歯(約3割)。
ここで一つ、クイズを出します。皆様は、歯を失う原因の第3位は何だと思いますか?
答えは、「歯根破折(しこんはせつ)」です。
日本人の歯の喪失原因において、歯根が割れたり折れる歯根破折は第3位。
歯が喪失したケースにおいて、約2割の方は歯根破折が原因で歯を失っています(※)。
(※)公益財団法人8020推進財団
「第2回 永久歯の抜歯原因調査」(2018)
より引用。
目次
■歯根破折が起きやすくなる主な原因
歯の根っこである歯根が割れたり折れる、歯根破折。
以下のような因子があると、歯根破折が起きやすいです
①歯の神経(歯髄)を抜いた歯
むし歯治療などで歯の神経(歯髄:しずい)を抜いた歯(=抜髄&根管治療を行った歯)は歯根から栄養が送られなくなり、もろくなっていきます。
特に、40代以降の中高年の方は、若い頃のむし歯治療などで神経を抜いた歯に歯根破折が起きやすいです。
②歯ぎしり・食いしばりの癖
歯ぎしり・食いしばりの癖があると、歯・歯周組織に過剰な負荷がかかりやすくなります。
歯ぎしり・食いしばりの癖によって過剰な負荷がかかり、歯根破折が起きるケースは少なくありません。
③歯並びの乱れ(=噛み合わせの乱れ)
歯並びが乱れている方は、噛み合わせも乱れていることが多いです。噛み合わせが乱れていると、歯・歯周組織にアンバランスで過剰な負荷がかかりやすくなります(外傷性咬合)。
外傷性咬合の状態になると歯・歯周組織に過剰な負荷がかかり、歯根破折が起きることも。
{合わない詰め物・被せ物が噛み合わせの乱れをひき起こしていることも}
外傷性咬合をひき起こす因子としては、精度が低く周りの歯と高さや位置が合わない詰め物・被せ物(不良補綴物)も原因の一つに挙げられます。
④金属の歯の土台(メタルコア)
根管治療で歯の内部を大きく削ったときや、差し歯治療では、歯の強度を補うために歯の中にコアと呼ばれる土台を入れることがあります。
コアの素材は様々ですが、金属製のメタルコアは丈夫な反面、歯に負担がかかりやすいです。
ファイバーコア・レジンコアと比べてメタルコアは歯に負担がかかりやすく、噛んだときの衝撃によって歯根破折が起きることも。
■歯根破折で見られる主な症状
◎歯根が割れたり折れても、ご自身ではすぐには気づけないケースが多いです
歯根破折は発見が遅れがち。
歯根破折が起きると、主に以下のような症状が見られます。
症状の中にはお口の病気以外の通常時に起きるものもあるため、ご自身では歯根が破折したことにすぐには気づけないケースが多いです。
[歯根破折が起きているときに見られる主な症状]
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歯がしみる
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歯に違和感がある(噛んだとき、歯がゆれる感覚がある)
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噛んだときに歯が痛む
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一部の歯ぐき(歯根破折を起こした歯の歯ぐきや周辺の歯ぐき)が赤く腫れている
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歯ぐきから膿が出てくる(歯ぐきの表面にぷくっとした白いおでき(フィステル)ができることも)
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歯の根っこや歯ぐきが痛む
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歯がグラグラする(完全破折が起きている場合)
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歯が抜け落ちる(完全破折が起きている場合)
■歯根破折の治療方法
◎歯根破折は治療が難しく、歯を残せずに抜歯になるケースが少なくありません
歯根の割れ方・折れ方や歯根の状態などにもよりますが、歯根破折は歯を残すのが難しいことが多いです。
歯根が完全に割れておらず、破折が歯根の上部のみに留まっているケースでは、接着剤を用いて歯根をくっつけることで歯を残せる場合があります。
歯根の割れが大きい、または、歯根が完全に割れているケースでは、歯を残せずに抜歯せざるを得ないケースが少なくありません。
抜歯後は、患者さまのご同意を得た上で、インプラント・入れ歯・ブリッジなどの歯を補う治療(補綴治療)を進めていきます。
【歯科医院で定期検診を受け、定期的に歯・歯周組織の状態を確認&ケアする習慣をつけましょう】
歯根破折を防ぐための方法としては、以下のような対策が挙げられます。
[歯根破折を防ぐために歯科医院で行う対策の例]
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噛み合わせの治療(歯科矯正、咬合調整)
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マウスピースの着用(ナイトガードなど)
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ファイバーコア・レジンコアの使用
上記のような対策に加え、歯根破折で歯を失わないようにするためには、歯科医院で定期検診を受けることが重要です。歯科医院で定期的に検診を受けることで歯・歯周組織の状態を確認&ケアができ、上記のような対策を取りやすくなります。
歯根破折で抜歯となった場合でも、当院ではインプラント治療をはじめ、入れ歯などの治療にも対応しています。