「オールオンフォーにしたから、もう歯みがきはしなくてイイ?」
「インプラントオーバーデンチャーはむし歯にならないよね」
オールオンフォー、インプラントオーバーデンチャーは人工歯のためむし歯にはなりません。ただし、人工歯を支える顎の骨や歯ぐきは生身の組織です。
毎日の歯みがきによるセルフケアを怠ると、お口の中で細菌が増殖してインプラント周囲炎を発症するおそれがあります。インプラント周囲炎になると歯ぐきが腫れる・歯ぐきから出血する・歯ぐきから膿が出るなどの症状が現れるほか、重度に進行した場合は顎の骨が溶けてフィクスチャーが抜け落ちてしまうケースも。
今回は、治療後のお口の健康を守るために欠かせない「オールオンフォー、インプラントオーバーデンチャーのお手入れ方法」をご紹介します。
目次
■オールオンフォーのセルフケアの仕方
①人工歯部分は普通の歯みがきでOKです
オールオンフォーは顎の骨に埋め入れた4本のインプラントで連結した人工歯ブリッジをネジ固定します。
固定式のため、人工歯部分は普通の歯みがきでOKです。
歯を磨くときは以下のポイントを守ってブラッシングしましょう。
・歯ブラシは「ふつう」か「やわらかめ」の物を選ぶ
・ペンを持つように軽い力で歯ブラシを持つ(ゴシゴシと強い力で磨かない)
・1~2本の歯に対して歯ブラシを小刻みに動かし、15~20回往復させる
・磨きにくい前歯の裏側は歯ブラシを縦にしてブラッシングする
・歯と歯のあいだ(隣接面)の溝はワンタフトブラシを使って汚れをかき出す(※)
・歯磨き粉は使わなくてもOK 使いたい場合は研磨剤が入っていない物を選ぶ
(※)オールオンフォーは歯の隣接面が歯ぐきまでつながっている構造のため、デンタルフロスや
歯間ブラシによる隣接面の清掃は不要です(糸やブラシが歯のあいだに通らない)。
{フッ素入りの歯磨き粉は使っても大丈夫?}
以前はフッ素がチタン金属であるフィクスチャー・アバットメントを侵蝕すると考えられていました。現在の見解では、市販の歯磨き粉(高濃度フッ素の物を含む)のフッ素濃度ではインプラントパーツに大きな影響を与えないとされています。ただし、万が一のトラブルを避けるため、フィクスチャーが顎の骨と結合して安定するまでのあいだはフッ素入りの歯磨き粉の使用は控えてください。
フィクスチャーが顎の骨と結合して安定した後は、フッ素入りの歯磨き粉を使用してもかまいません。
{マウスウォッシュ(洗口液)は使ってもOK?}
フッ素の有無を問わず、マウスウォッシュは使用できます。ただし、万が一のトラブルを避けるため、フィクスチャーが顎の骨と結合して安定するまでのあいだはフッ素入りのマウスウォッシュの使用は控えてください。
フィクスチャーが顎の骨と結合して安定した後は、フッ素入りのマウスウォッシュを使用してもかまいません。
②人工歯と歯ぐきの境目部分はワンタフトブラシやスーパーフロスを使って清掃しましょう
オールオンフォーは人工歯(連結した人工歯ブリッジ)と歯ぐきに境目があります。人工歯と歯ぐきの境目を清掃するときはワンタフトブラシやスーパーフロスを使って汚れを落としましょう。
ワンタフトブラシとは毛先がペンのように尖った小さな歯ブラシです。ワンタフトブラシを使うことで毛先が入り込み、人工歯と歯ぐきの境目部分の汚れをかき出しやすくなります。
スーパーフロスとは糸の先端が硬く、糸がふくらんで太くなっているフロスです。モコモコと糸がふくらんでいるスーパーフロスを使うことで、通常のフロスを使った場合と比べ、より、人工歯と歯ぐきの境目部分の汚れをかき出しやすくなります。
{歯間ブラシで人工歯と歯ぐきの境目部分を清掃しても大丈夫?}
金属ワイヤー製の歯間ブラシは人工歯や歯ぐきを傷つける原因になるため、使用は控えてください。シリコンゴム・ゴム製の歯間ブラシであればOKです。
歯間ブラシの太さによっては境目部分にブラシが通らないこともあります。無理に歯間ブラシを使おうとせず、人工歯と歯ぐきの境目部分はワンタフトブラシやスーパーフロスでの清掃をおすすめします。
{食後、時間がない場合は水でお口をゆすぎましょう}
お口の衛生状態を保つため、食後は毎回、人工歯と歯ぐきとの境目部分をワンタフトブラシやスーパーフロスで清掃するのが望ましいです。時間が取れない場合やどうしても面倒なときは食後、水でお口をゆすぎましょう。ただし、1日1回、就寝前だけは必ずワンタフトブラシやスーパーフロスで境目部分を清掃してください。
■インプラントオーバーデンチャーのセルフケアの仕方
①入れ歯専用の歯ブラシを使いましょう
インプラントオーバーデンチャーは顎の骨に埋め入れた2~4本のインプラント(ロケーター)の先端に総入れ歯を接続します。
取り外し式のため、毎日のお手入れでは入れ歯を取り外して清掃できます。清掃の際は入れ歯専用の歯ブラシを使って入れ歯の汚れを落としてください。通常の歯ブラシを使うと入れ歯を傷つけてしまう可能性があります。
入れ歯の汚れがひどい場合は入れ歯専用の洗浄剤を使うと汚れを落としやすくなります。
②ロケーター部分は「やわらかめ」の歯ブラシで清掃しましょう
入れ歯を接続するインプラントの先端部分をロケーターと呼びます。ロケーター部分の清掃は通常の歯ブラシでOKです。ただし、歯ブラシの毛の硬さは「やわらかめ」にしてください。「かため」の歯ブラシを使うとロケーターや歯ぐきを傷つけてしまう可能性があります。
【セルフケア+プロケアでインプラントをより長持ちさせましょう】
オールオンフォー、インプラントオーバーデンチャーはどちらもインプラントで人工歯(総入れ歯)を支える治療法です。インプラントをより長持ちさせ、お口の健康を守るためには患者様ご自身で行う毎日の歯みがき(入れ歯のお手入れ)が基本のケアとなります。
セルフケアに加え、歯科医院での定期メンテナンスも欠かせません。特に固定式のオールオンフォーは構造上、定期的にネジの締め直し、および、人工歯・インプラント周辺の清掃が必要になります。インプラントオーバーデンチャーも定期メンテナンスが必要です。
定期メンテナンスでは歯科医師がインプラントとお口の状態をチェックし、歯科衛生士がお口のクリーニング(PMTC)を行います。定期的にインプラントとお口の状態をチェックすることでインプラントの異常やむし歯・歯周病などのお口の病気をいち早く察知でき、早期処置・早期治療につなげられます。
また、PMTCにより徹底的に清掃を行うことでご自身では落とし切れない汚れを除去でき、口腔内を清潔な状態に保ちやすくなります。
インプラント寿命を延ばしお口の健康を維持するためにも、治療後は毎日のセルフケアをしっかり行い、併せて、歯科医院で定期メンテナンス(プロケア)を受けましょう。