「インプラントにしたから、もうむし歯にはならないよね」
「インプラントだから、歯みがきはほどほどで大丈夫かな」
インプラントは人工歯のため、むし歯にはなりません。むし歯にはなりませんが、インプラントを取り囲む歯ぐきや顎の骨は患者さまの生身の組織です。
インプラント周りの歯みがき・歯間清掃を怠ってしまうとインプラントと歯ぐきの境目の歯周ポケットに歯垢が溜まり、歯周病の一種である「インプラント周囲炎」を発症する可能性が高まります。このため、インプラントの治療後はインプラント周りを含めてしっかりと歯を磨くことが大切です。
今回は「インプラントの歯みがき・歯間清掃の注意点」についてお話しします。
目次
■インプラントの歯みがきの仕方は?
◎通常の歯みがきと同じでOKです ただし、インプラント周りは入念に清掃しましょう
インプラントは通常の歯みがきと同じでOKです。インプラントに合わせた特殊な磨き方はありません。特殊な磨き方はありませんが、インプラント周りは入念に清掃しましょう。
■インプラント周りを入念に清掃する理由
◎インプラント周りの清掃を怠ると、インプラント周囲炎を発症する可能性が高まります
インプラント周りの清掃を怠ると、インプラントと歯ぐきの境目の溝である歯周ポケットの中(アバットメント(連結部品)の周辺)に歯垢が付着し、歯周病の一種であるインプラント周囲炎を発症する可能性が高まります。
上記の理由から、インプラント周りは以下の方法で入念に清掃してください。
■インプラントの清掃方法
①毛先が細い歯ブラシ+通常の毛先の歯ブラシの2種類を使いましょう
インプラント周りを清掃するときは、毛先が細い歯ブラシを使いましょう。毛先を歯周ポケットの中に入れ、人工歯の根本とアバットメント(連結部品)の周辺についた歯垢をかき出して落とすようにしてください。インプラント以外の天然歯についても同様に毛先を歯周ポケットの中に入れて歯の根面周辺についた歯垢をかき出しましょう。
なお、毛先が細い歯ブラシは歯周ポケットに入りやすい反面、歯の表面の清掃力が落ちます。このため、歯みがきの際は歯周ポケット用の毛先が細い歯ブラシ(歯周病予防のために作られた毛先が細い歯ブラシがおすすめです)に加え、歯とインプラントの表面を磨くための通常の毛先の歯ブラシ(毛先が細すぎない通常の物)の2種類を使ってください。
上記に加え、3種類、4種類と毛先の細さや硬さの違う歯ブラシを用いるのもオススメです。いずれも、毛の硬さは「ふつう」または「やわらかめ」にしましょう。毛の硬さが「かたい」歯ブラシは歯やエナメル質の表面を傷つけてしまうことがあるため、避けましょう。
2種類以上の毛先の細さ・毛の硬さの歯ブラシを使い、歯とインプラントの表面&歯周ポケット内部の歯垢をしっかり落としましょう。
②歯間清掃も忘れずに行いましょう
歯みがきでは歯間清掃も忘れずに行ってください。
清掃時にはデンタルフロスでインプラントの側面(人工歯と隣の歯の隣接面)の歯垢を落としましょう。
歯間が空いている方は歯間ブラシを使ってもかまいません。ただし、無理に歯間ブラシを挿し入れるとインプラントや歯の表面を傷つけてしまうおそれがあります。歯間が狭い方は無理に歯間ブラシを使わず、デンタルフロスで歯間清掃を行ってください。
③ワンタフトブラシを使うことで人工歯の根本の歯垢を落としやすくなります
ワンタフトブラシとは毛先がペンのように尖り、束になった小さな歯ブラシです。
インプラント周りを清掃するときは、毛先が尖ったワンタフトブラシを使うことで人工歯の根本についた歯垢を落としやすくなります。
2種類以上の歯ブラシと併せて、ワンタフトブラシも活用しましょう。
■インプラントの歯みがき・歯間清掃の注意点
◎フッ素入りの歯磨き粉、および、マウスウォッシュは使ってもOKです
インプラント周りを清掃するときは、フッ素入りの歯磨き粉、および、マウスウォッシュを使ってもOKです。
以前、「フッ素はインプラントのチタン金属(顎の骨に埋め入れるフィクスチャー)を腐食させる」という説が広まった時期がありました。しかし、この説は誤りであることが判明しています(※)。
(※)日本口腔衛生学会「フッ化物配合の歯磨剤の利用はチタ
歯科材料使用者にも推奨すべきである 」(2015)より引用。
フッ素には歯のエナメル質の再石灰化をうながし、歯質を強くする作用があります。残っている天然歯の歯質を強化し、むし歯を防ぎやすくするためにも、フッ素入りの歯磨き粉を使って歯・インプラントを磨きましょう。フッ素入りのマウスウォッシュを使うのもOKです。
【毎日のセルフケア+歯科医院で受ける定期メンテナンスでインプラントと歯の健康を守りましょう】
インプラントのメンテナンスでは「細菌感染」と「噛み合わせ」をコントロールすることが重要です。毎日の歯みがきに加え、歯科医院で定期的に検診を受けることで、細菌によって発症するむし歯・歯周病・インプラント周囲炎(歯周病の一種)の早期発見・早期治療につながります。また、歯科医院で定期的に行う歯のクリーニングと噛み合わせのチェックにより、天然歯・インプラントの寿命を延ばしやすくなります。
当院では、以下によるインプラントの定期メンテナンスを行っています。
①レントゲン撮影
②噛み合わせのチェック
③歯や歯ぐき、お口全体のチェック
④歯・インプラントのクリーニング
⑤歯磨き指導、食生活改善指導
むし歯・歯周病・インプラント周囲炎など、細菌感染が原因のお口の病気を防ぎ、天然歯・インプラントを長く保ち続けるためにも、歯科医院で定期的にインプラントのメンテナンスを受けましょう。