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噛む機能と健康寿命



世界トップクラスの平均寿命を誇る国、日本。日本人の平均寿命は年々、延びています。


しかし、大切なのは平均寿命ではなく健康寿命です。年齢を重ねても健康的な人生を送るには、しっかりと食べ物を噛む機能を持つことが欠かせません。


今回は「噛む機能」と健康寿命の関係についてお話をさせていただきます。


■噛む機能と健康寿命の関係


◎噛む機能は健康を支える第一の要素

人間のエネルギーの源は「食事」。食事=食べ物を噛んで飲み込むことは、人間の健康の根源を支える第一の要素です。


◎健康寿命とは

健康寿命とは「自分でできることは自力で行い、人の力を借りず健康的に生きられる期間」です。健康寿命に対し、平均寿命は単に生命活動の期間を指します。


平均寿命が長くても、介護など人の力を借りなければ生活できなかったり、満足に食べ物を噛めないと生活の質(Quality of Life)は低下します。


年齢を重ねても生き生きと健康的な人生を送るためには、人の力を借りず、できることは自力で行う健康寿命の期間を延ばすことが大切です。


◎しっかり噛める歯を持つことが健康寿命の延伸につながる

しっかり噛める歯とは、食べ物を噛み砕き、すりつぶせる歯を指します。


{しっかり噛める歯があれば豊富な食材から栄養を摂取できる}


しっかり噛める歯があれば、肉や魚、野菜、米、ナッツ類など、どんな物でもよく噛んで栄養を摂取できます。豊富な食材から栄養を摂取することで健康な身体を保ちやすくなります。


{しっかり噛む歯は認知症の予防につながる}


しっかり噛むことで脳の神経に刺激が伝わるとともに脳に流れる血流が増加し、認知症の予防につながります(※)。


(※)神奈川歯科大学大学院 山本龍生教授

歯科から考える認知症予防への貢献」(2017年)より引用。


■噛む力が弱まると…


噛む力は全身の健康と大きく関係しています。噛む力が弱まると、以下のようなさまざまな症状や病気がひきおこされやすくなります。


[噛む力が弱まることでひきおこされる症状、病気]


①十分に栄養を摂取できなくなる

②低栄養や栄養バランスの偏りにより、全身の健康が悪化する

③飲み込む力が弱まる(嚥下障害)

④糖尿病や高血圧、肥満のリスクが高まる

⑤認知症リスクが高まる


①十分に栄養を摂取できなくなる


歯周病やむし歯などが原因で歯を失い、噛む力が弱まると弾力のある肉や繊維質の野菜が噛み切れなくなってきます。うまく噛み切れないため肉や野菜を避けるようになり、肉に含まれるタンパク質や野菜に含まれるビタミン、ミネラルが不足しがちになります。


②低栄養や栄養バランスの偏りにより、全身の健康が悪化する


噛む力が弱まり肉や野菜の摂取が不足すると、低栄養や栄養バランスの偏りにより、全身の健康が悪化しやすくなります。


③飲み込む力が弱まる(嚥下障害)


年齢を重ねると歯周病や歯根破折で歯を失うリスクが高まり、噛む機能が弱まっていきます。加齢により、舌を動かす機能や飲み込む機能、唾液の分泌機能、味覚も低下します。


噛む機能が弱まると、咬筋などの噛む筋肉をはじめとするお口周りの筋肉機能が全体的に鈍くなります。お口周りの筋肉機能が鈍ることで食べ物を飲み込む嚥下機能も連動して低下し、嚥下障害が起きやすくなります。


{嚥下障害によってひきおこされる「誤嚥性肺炎」の怖さ}


嚥下障害は食べ物を飲み込みにくくなるだけではありません。嚥下障害で怖いのは、飲み込む機能の低下により食べ物が誤って肺の中に入りひきおこされる「誤嚥性肺炎」です。


誤嚥性肺炎は日本人の死亡原因の第6位です。日本人全体の2.9%が誤嚥性肺炎により亡くなっています(※)。


(※)「人口動態統計月報年計(概数)」厚生労働省(2019)より。


誤嚥性肺炎は噛む機能や嚥下機能の低下にともない、高齢になるほど発生率が高まります。嚥下障害による誤嚥性肺炎を起こさないようにするには、噛む機能を保ち、お口周りの筋肉機能を低下させないことが重要です。


④糖尿病、高血圧、肥満のリスクが高まる


噛む機能が弱まると食べ物を噛み切りにくくなるため、肉などの弾力のある物や野菜などの繊維質の物を避けるようになります。噛む力が弱い方は、やわらかいご飯や麺類、プリンや甘いお菓子、ジュース、お酒などのあまり噛まなくてもよい食べ物・飲み物で食事を済ませがちです。


ご飯や麺類などの炭水化物を中心としたやわらかい食べ物や砂糖を含む甘いお菓子、清涼飲料水、お酒は糖分やカロリーが高い物が多いです。栄養過多になりやすく、糖尿病や高血圧、肥満になるリスクが高まります。


⑤認知症リスクが高まる


噛む機能は認知症リスクにも大きく関係しています。


しっかり噛んで食事をとると噛んだときの刺激が脳の神経に伝わり、脳の血流が増加して脳の機能が衰えにくくなります。


噛む機能が弱まり、あまり噛まずに食事をとる生活を続けていると噛む刺激が脳の神経に伝わらなくなり、脳の血流が低下して認知症リスクが高まることが明らかになっています(※1)。


また、歯が多く残っている方と比べ、歯が少ない方は約2倍、認知症になりやすいことが研究によって報告されています(※2)


(※1)(※2)神奈川歯科大学大学院 山本龍生教授

歯科から考える認知症予防への貢献」(2017年)より引用。


■噛む機能を保ち続けるためにはどうすれば良い?


◎ベストはご自身の天然の歯を保ち続けること

年齢を重ねても、しっかり噛む機能を保つことが健康寿命の延伸につながります。


ベストは、ご自身の天然の歯を保ち続けることです。当院はインプラント治療を得意分野としますが、どんなに優れた人工歯も天然の歯にはかないません。


ご自身の歯を保ち続けるためには、まずは毎日の歯磨きをしっかり行うことが大切です。セルフケアに加え、歯科医院で定期メンテナンス(歯の定期検診&歯のクリーニング)を受けることで歯周病やむし歯をはじめとするお口の病気を防ぎやすくなり、歯を残せる確率が高まります。


◎歯を失った方はインプラントがおすすめ

ベストはご自身の歯を残すことですが、歯を失ってしまった方は人工歯で歯を補うことで噛む機能を回復できます。


おすすめは、安定性が高く残っている歯を傷つけないインプラントです。インプラントは顎の骨に直接、人工歯根を埋め込みます。生体現象により、人工歯根が顎の骨と強固に結合するため非常に安定性が高いです。手術後は天然の歯に近い感覚で硬い物もしっかり噛めるようになります。


インプラントは歯を失った箇所にのみ治療を行います。ブリッジや入れ歯と異なりほかの歯を傷つけないため、インプラントにすることで残っている歯の寿命の延伸につながります。


【しっかり噛める歯で第二の人生を快活に楽しむ】


「人生100年時代」と言われて久しい昨今。中高年世代の方がこれからの第二の人生を快活に楽しむためには、まずはしっかり噛める歯を持つことが大切です。


歯がある方は今ある歯をできるかぎり残すためのケアを継続し、歯を失ってしまった方はインプラントにより噛む力を回復することで、健康的に生活できる健康寿命の期間を保ちやすくなります。


失った歯の治療方法や歯科医院選びでお悩みの方は当院までお気軽にご相談ください。

あくね歯科クリニック
歯科医師
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