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抗凝固薬の服用中でも抜歯は可能?休薬の危険性と歯科治療の判断基準

抗凝固薬の服用中でも抜歯は可能?休薬の危険性と歯科治療の判断基準

薬を止めるべきか、続けるべきか。迷われている方へ


脳梗塞予防のために抗凝固薬を飲みながら、奥歯の抜歯をすすめられた——。薬を続けたままで血は止まるのか、かといって自分の判断で止めてよいものか。悩む方は少なくありません。現在の歯科診療では、抜歯などの小手術は服薬を続けたまま行う考え方が基本とされています。 その根拠と、受診前に整えておきたい準備をまとめます。


この記事の要点まとめ


  • 抗凝固薬服用中でも、抜歯など小手術は継続したまま行う考え方が基本とされています
  • 自己判断での休薬は血栓リスクにつながる可能性があり、主治医への相談が大切です
  • お薬手帳の提示や医科歯科連携により、出血対策を含めた処置計画が検討されます

抗凝固薬の服用中でも抜歯や手術は可能?休薬を行わない理由


抗凝固薬や抗血小板薬(あわせて抗血栓薬と呼びます)を服用中の方から、「抜歯の前に薬を止めなくていいのですか」というご相談をよくいただきます。かつては休薬が広く行われていましたが、この十数年で考え方は大きく変わってきました。


自己判断での服薬中断が招く血栓塞栓症のリスク


心房細動などの不整脈で抗凝固薬を続けている方にとって、薬は血栓塞栓症を防ぐ土台そのもの。自己判断で数日中断した場合、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な事象につながる可能性が指摘されています1。抜歯による出血はお口という限られた範囲の出来事で、圧迫や縫合という局所的な手立てが使えます。けれど脳血管や心臓にできた血栓は、そうはいきません。


「抜歯前には薬を止めるもの」という認識は、現在の診療の考え方とは異なる場合があります。 内科の主治医から「自己判断での中止は避けてください」と言われている方は、その指示を優先し、その旨をそのまま歯科医院にもお伝えください。


科学的根拠に基づく「内服継続下での処置」という方針


各種の診療ガイドラインでは、通常の抜歯や歯周外科といった小規模な処置について、抗血栓薬を継続したまま実施する方針が示されています1。休薬に伴う血栓のリスクと、継続に伴う出血のリスクを並べて考えたとき、局所止血で対応しやすい歯科の出血のほうが管理を組み立てやすい——そう考えられているためです。


とはいえ、すべての方に一律で当てはまる話ではありません。処置の範囲、全身の状態、服用薬の組み合わせによって判断は変わってきます。愛知県内でも医科歯科連携の体制は医院ごとに差がありますので、事前のご相談をおすすめします。


服用薬の種類による特徴と処置時の出血コントロール


抗血栓薬とひとくちに言っても、薬剤ごとに効き方も体内での持続時間も異なります。歯科側はその性質を踏まえて処置の計画を組み立てていきます。


ワルファリンとDOAC(新規経口抗凝固薬)の管理基準の違い


ワルファリンは効果の出方に個人差があり、食事内容や併用薬にも左右されます。そのためPT-INRという血液検査の数値で効き具合を確かめてから処置日を決める進め方が一般的です1。直近の検査値が治療域に収まっていれば、継続したまま抜歯を行う判断がとられるケースが多くなります。


一方、イグザレルト、エリキュース、リクシアナ、プラザキサといったDOAC(直接経口抗凝固薬)は、定期的なINR測定を必要とせず、作用時間も短い傾向にあります。服用のタイミングと処置時刻の関係を調整する配慮がとられることもあります。バイアスピリンなどの抗血小板薬はまた別の働き方をするため、複数の薬を併用中の方は術前管理をより慎重に進めます。


局所止血剤や縫合を用いた術後の出血対策


服薬を続けたまま処置する場合、鍵を握るのは局所止血です。抜歯した穴に吸収性の止血用スポンジを詰め、歯ぐきを縫合して創部を閉じ、その上からガーゼで15〜20分ほどしっかり圧迫します。状況に応じて止血用シーネを用いることもあります1


処置後は、うがいを繰り返さない、飲酒や入浴で血行を高めない、舌や指で傷口を触らない。こうした生活面の注意も欠かせません。止血の経過は、術式そのものより術後数時間の過ごし方に左右される場面が少なくないのです。


医科歯科連携の流れと受診前に患者さまが準備すべきこと

医科歯科連携の流れと受診前に患者さまが準備すべきこと

服薬中の外科処置は、歯科医院だけで完結するものではありません。内科の主治医と情報を分かち合いながら進める体制が前提になります。


お薬手帳の提示と内科主治医への診療情報提供依頼(対診)


初診時にぜひお持ちいただきたいのが、お薬手帳(またはすべての処方内容がわかる書類)です。薬剤名だけでなく用量、服用を始めた時期、直近の血液検査結果まで揃っていると、判断材料が広がります2。基礎疾患の診断名、通院先の病院名と主治医名もメモしておくと、話がぐっと進めやすくなります。


そのうえで歯科から内科主治医へ、処置内容・想定される出血量・全身状態について文書で照会します。これを対診と呼び、回答を踏まえて継続のまま行うか、処置を分割するかなどを検討していきます。当院は「かかりつけ歯科医機能強化型診療所」の認定を受けており、全身の状態に配慮しながら継続的に口腔内を診ていく姿勢を大切にしています。


歯科用CTやオペ室などの設備環境を活用した処置計画


処置の前に、歯根の形態や骨の状態、上顎洞や神経との位置関係を立体的に把握しておくことは、出血や侵襲を抑えるうえで意味を持ちます。当院では歯科用CTとマイクロスコープを用いた診査を行い、外科処置は無影灯を備えたオペ室で実施しています12。院長は医学部附属病院の歯科口腔外科で有病者の全身管理を学んだ経歴があり、その視点も日々の診療に反映しています。


愛知県名古屋市緑区で、服薬中の歯科治療にご不安のある方。まずは服薬情報をお持ちのうえ、ご相談ください。


よくある質問


Q1. 抗凝固薬は手術の前に中止すべきですか?

A. 抜歯などの歯科小手術については、継続したまま行う方針が基本的な考え方として示されています。中止の要否は処置内容と全身状態によって変わりますので、自己判断はせず、内科主治医と歯科医師の相談のうえで決定します。


Q2. ワルファリンは手術前に休薬しなくてはいけませんか?

A. PT-INRが治療域内であれば、継続したまま抜歯を行う判断がとられることが多くなります。直近の検査値をご持参いただくと相談が進めやすくなります。


Q3. 抗凝固薬は手術にどう影響しますか?

A. 出血量がやや増える、止血に時間がかかる、といった影響が想定されます。そのため止血用材料の填入や縫合、圧迫止血をあらかじめ計画に組み込みます。


Q4. 休薬なしで受けられる処置にはどんなものがありますか?

A. 一般には通常の抜歯、歯石除去、内視鏡検査(生検を伴わない場合)、皮膚の小処置などが低リスクとされています。ただし個々の状況によって判断は変わります。


Q5. 術後、薬はいつから元どおり飲めますか?

A. 継続下で行った場合は服用リズムを変えないことが原則とされています。調整を行った場合の再開時期は、止血の状況を確認したうえで主治医の指示に従ってください。


参考文献


1. 公益財団法人 日本医療機能評価機構「Minds ガイドラインライブラリ」 https://minds.jcqhc.or.jp/

2. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(口腔・歯の健康)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/teeth

3. 日本臨床歯周病学会 https://www.perio.jp/


阿久根 竜大

歯科医師


あくね歯科クリニック

院長

阿久根 竜大

▶ 監修者プロフィール

経歴
福岡歯科大学卒業(2002年)
福岡大学病院歯科口腔外科入局
白十字病院口腔外科非常勤
小文字歯科非常勤(主に往診診療)
加藤歯科医院常勤(愛知県安城市)
あくね歯科クリニック(2008年 副院長就任)
あくね歯科クリニック(2014年7月 院長就任)
資格・所属学会
日本口腔インプラント学会専門医
ICOI(国際インプラント学会)アメリカ 認定医
日本顎咬合学会 認定医
ITI日本支部公認インプラントスペシャリスト
国際インプラントITIメンバー(International Team for Implantology Membership)
日本歯周病学会
日本顕微鏡歯科学会
日本抗加齢医学会(アンチエイジング)
日本歯科医師会 愛知県歯科医師会
名古屋市緑区歯科医師会
ライトタッチレーザー会員